【電池メーカー設計者が語る】リチウムイオン電池までの歴史について

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2019年リチウムイオン電池の開発において吉野彰さんがノーベル化学賞を受賞したのは記憶に新しいという人は多いでしょう。
リチウムイオン電池開発までの歴史について簡単にご説明したいと思います!
また、リチウムイオン電池の簡単な説明については、こちらの記事を参考にしてください!

 

〈参考文献〉

 

◇1次電池
●ボルタ電池
ボルト(V)の名前の由来!

<仕組み>

1.亜鉛(負極)が希硫酸に溶ける。
イオンとは、電子の過剰または欠損によって電荷を帯びた原子または分子のこと。
電子が少なくプラスの電荷⇒陽イオン
電子が多くマイナスの電荷⇒陰イオン

2.溶けた亜鉛の分だけの電子が銅側(正極側)に移動する。

3.正極側で電子を消費する反応が起きる。

<イオン化傾向、電位>
・負極の亜鉛は希硫酸に溶けやすい。⇒イオン化傾向が大きい
・マイナスの電荷が大きい⇒電位が低い
・負極と正極のマイナス電荷の差⇒電位の差
・負極材料と正極材料のイオン化傾向の差(電解液への溶けやすさの差)が大きいほど大きな起電力を得る。

<放電>
・負極の電子が正極の銅イオンと反応すると、金属の銅になる。⇒析出する
・負極の亜鉛は電解液に溶けて減るが、正極の銅は太っていく。

<充電>
正極の銅を電解液に溶かして正極から負極に移動させ、亜鉛イオンと反応させて亜鉛を析出する。

<課題>
・電子と水素イオンの反応が減ってしまう。
・銅と水素が付着して、局所的な電池が出来てしまう。⇒分極

 

●ダニエル電池
初の実用的な電池!

<仕組み>

・正極Cuと負極Znで別の電解液を使用して解決
・正極の方を素焼きの容器にして小さな穴をたくさんあけてイオンを行き来出来るようにした。
・亜鉛イオンが負極から正極に、硫酸イオンが正極から負極に移動

 

●ルクランシェ電池
マンガン乾電池の原型!

<仕組み>

正極に銅ではなく炭素棒、負極に亜鉛、電解液に塩化アンモニウムを使用

 

●マンガン乾電池、アルカリマンガン乾電池

<仕組み>

・マンガン電池は電解液に、酸性の塩化亜鉛水溶液を使用。
・マンガン乾電池は、二酸化マンガンを正極の活物質にしている。
・アルカリ電池は、正式にはアルカリマンガン電池という。
・電解液にアルカリ性の水酸化カリウム水溶液を使用。

 

●リチウム電池

<仕組み>

・負極に金属リチウムを使用。
・電圧、エネルギー密度が突出している。

<課題>
負極に金属リチウムを使うのは安全性上危険。

 

◇2次電池
●鉛電池
1859年フランスのガストン・プランテが発明!

<仕組み>

正極に二酸化鉛、負極に鉛、電解液に希硫酸を使用。

 

●ニッケルカドミウム電池
1899年スウェーデンのユングナーが発明!

<仕組み>

負極活物質にカドミウム、正極活物質にオキシ水酸化ニッケル使用

<性能>
エネルギー密度は鉛電池の2倍

 

●ニッケル水素電池
1990年に松下と三洋が量産化!

<性能>

エネルギー密度がニッケル・カドミウム電池の2倍

 

●電気が流れるプラスチック
・ポリアセチレンは電気を通す。原子が電子を2個ずつ出しあっている。⇒二重結合
二重結合がひとつおきに並んでいる。⇒共役二重結合⇒パイ結合⇒電気が流れやすい。⇒リチウムイオン電池の開発につながった。
・イオンと電子を出し入れ出来る。つまり2次電池になるという点に着目した。
・当時は負極に金属リチウムを使用しており、大変危険であった。⇒負極にポリアセチレンが使えないかを検討
しかし、今までは負極にリチウムが含まれていたが、負極にポリアセチレンを使う場合正極にリチウムを使わなければならない。
1982年グッドイナフの論文に正極にコバルト酸リチウムを使うことが書かれていた。
・正極コバルト酸リチウム、負極ポリアセチレンで特許を提出。⇒リチウムイオン電池の原型
・ポリアセチレンの比重は1.2であり、軽量化には有利だが、体積が嵩張る。
・カーボンは比重が2位上あり、共役二重結合を持つ化合物である。カーボンファイバーであるVGCFと出会い、電池特性が頭抜けて良かった。
⇒リチウムイオン電池の小型化と軽量化が可能になった。
・正極材料のコバルト酸リチウムは炭酸リチウムと酸化コバルトを900℃の高温で焼成して作る。
しかし、リチウム化合物は高温では腐食性が高く焼成炉が1発でオジャンになってしまう。
そこで、外注した先はまさかの岐阜の美濃焼を作る窯であった。温度管理も窯の腐食も起こらずに上手くいった。
⇒日本の陶磁器という伝統的な技術の貢献があった。

 

●リチウムイオン電池の用途
・テスラのモデルSは、18650電池を8000本以上接続している。
・1995年にIT革命、2010年にET(Energy & Environment Technology)革命が起きた。
2010年にアイミーブ、リーフが発売。
・2025年にはAIとIOTを掛け合わせて新たな革命が起きる可能性がある。

 

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