【電池メーカー設計者が語る】ノーベル化学賞・吉野彰さんの偉業とは!?

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2019年にノーベル化学賞を受賞した吉野彰さんについて「聞いたことはある!」「リチウムイオン電池に貢献した人でしょ!」と大まかに知っている人は多くいらっしゃると思います!
もう少し踏み込んで具体的にどんな貢献をしたのか、どんなすごい功績を残したのかについて簡単にご紹介したいと思います!
リチウムイオン電池開発までの歴史についてはこちらの記事を参照下さい!

 

●まずリチウムイオン電池とは
・リチウムイオン電池は、小型、軽量、高電圧かつ充放電可能な電池で、日本では1991年に工業製品として実用化されました。
・固体の中では最も古く軽い元素で標準電位が小さい-3.0VのLi(リチウム)を使った電池になります。
・性能上の特長は、高電圧、高エネルギー密度、高充電回数になります。
・環境問題解決に貢献しております。
・用途としては、リチウムイオン電池は陸海空あらゆるところに使われております
ざっくり、携帯電話からノートパソコン、電気自動車に至るまで広い範囲で使用されています。また、電気自動車の開発や太陽光発電や風力発電などの自然界のエネルギーによって発電した大量の電力を貯蔵など、化石燃料を使用しない社会の実現にも寄与しております。
以下に陸海空の具体的な用途をご紹介します!

【陸】
・電子機器のモバイル化に貢献。
・IT革命に貢献。
・ポータブル機器の普及に貢献。
⇨1991年の当時の8mmビデオカメラには電池の軽量、小型化がマストであり、これがリチウムイオン電池の進化そして普及のきっかけになります。
・蓄電池と再生可能エネルギーを掛け合わせて南相馬市に大型蓄電池を設置。(東芝SCiB)
・災害対策に貢献のため、小中高学校に蓄電池を設置。

【海】
・しんかい6500に使用。
⇨カメラ、ライト、アームの電源を担っています。
・最新鋭潜水艦とうりゅうに使用。

【空】
・小惑星探査機はやぶさに使用。
⇨ はやぶさは主に太陽光発電を動力源としています。
・現在、はやぶさ2に使用。(古川電池)

 

●吉野彰さんの功績
吉野さんの功績を語る前に同じくリチウムイオン電池でノーベル化学賞を受賞した2人の人物についても紹介しなければなりません!
左から吉野彰名誉フェロー、グッドイナフ教授、ウィッティンガム教授

2019年のノーベル化学賞は「リチウムイオン電池の開発」に対して米テキサス大学のジョン・グッドイナフ教授、米ニューヨーク州立大学のマイケル・スタンリー・ウィッティンガム卓越教授、旭化成株式会社吉野彰名誉フェローに授与されます。
以下にこの3人の研究成果についてざっくり解説します!

①1970年頃 ウィッティンガム卓越教授
世界初LiB開発!
負極:Li 正極:TiS2   2.0V
負極:Li   正極:MoS2 2.8V
〈仕組み〉
・空き部屋にLiを入れる。
・まず、放電して負極のLiを正極に入れる。
・正極の層上構造にLiを入れる。
・充電すると正極に移動したリチウムが負極に戻るが樹技状になり正極を攻めてくる。
・結果短絡する。単体Liは使わない方がよいという結果となる。
⇨実際MoS2は発火事故を起こしまくりました。

②1980年頃 グッドイナフ教授
起電力を高める!
負極:Li 正極:LiCoO2 4.0V
〈仕組み〉
・まず充電して正極のLiを析出させる。
・正極の層上構造にLiを入れる。
⇨酸化物を使う電池は革新的でしたが、単体Liを使うため、安全性に問題がありました。

③1985年頃 吉野彰名誉フェロー
負極にカーボンCを使用し、安全性確保!
負極:C 正極:LiCoO2 4.0V
〈仕組み〉
・今まで負極に使ってたLiをCにする。
⇨単体Liを使わない電池についに商品化しました。
層上の炭素の間にLiがあるのは、単体Liと変わらない標準電位であるという大発見をします。
安全性の問題で商品化には至っていなかったのですが、この大発見により製品化につながります。

 

●ノーベル化学賞を受賞した3人の経歴
マイケル・スタンリー・ウィッティンガム卓越教授
1941 年英国出身。米国の材料化学者。1968 年に 英国オックスフォード大学で博士号を取得した後渡米、博士研究員を米国カリフォルニア州・スタンフォード大学で経た後、1972 年にエクソンリサーチ&エンジニアリング社に入社。1984 年に世界最大の油田探査会社シュルンベルジェ社に転職後、1988 年にニューヨーク州立大学ビンガムトン校/ビンガムトン大学教授に就任して現在に至る。2012年からニューヨーク州立大学卓越教授。

ジョン・グッドイナフ教授
1922 年ドイツ・イェーナ出身。米国の固体物理学者。テキサス大学オースティン校教授。イェール大学の宗教学 者アーウィン・グッドイナフを父に持ち、ヴァイマル共和政時 代のドイツから移住して米国コネチカット州ニューヘイブン近郊で育つ。ニューヘイブンのイェール大学で数学を専攻し、1944年に卒業。第二次世界大戦後に軍隊に召集され、除隊後、シカゴ大学大学院に進学。1952年に物理学の博士号を取得。

吉野彰名誉フェロー
1948 年大阪府出身。電気化学を専門とする日本のエンジニア。大阪大学で博士号取得後、現旭化成株式会社名誉フェロー。名城大学大学院理工学研究科・教授、九州大学エネルギー基盤技術国際教育研究センター客員教授などを歴任。

 

●感想
・民間企業に勤める一研究者からノーベル賞が授与されたことがとてもすごいことだと思います。これは吉野さんも語っており、一番嬉しいことだとおっしゃっていました。
また、1981年に福井謙一さん、2000年に白川英樹さん、2019年に自分(吉野彰さん)が受賞したので19年後の2038年におそらく日本人のノーベル化学賞が出てくるだろうと述べていたので是非注目したいと思います。
・2025年、IT革命が起きた1995年のように世界はガラッと変わるだろうとおっしゃっていたことも印象的なのでこちらも目が離せないでしょう。時代の変遷にいる我々は、この流れにうまく乗れるのかが重要です。

 

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