今、世界中で環境問題について騒がれています。地球温暖化、大気汚染の影響によりガソリン車、ディーゼル車の販売禁止の規制など様々な動きがある中で、各車メーカーの動向について簡単にまとめました。
自動車会社関係に携わる方は是非チェックしてみてください!また、各国のEV車の動向についても是非確認下さい!
この記事の参考文献は『決定版EVシフト(東洋経済)』となります。
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●欧州
☆VW
欧州のEV化への火付け役とも言える存在です。
VWのEVシフトへの要因としては①重点市場である中国のNEV規制強化、②ディーゼルゲート、③米国政権変更の3つがあげられます。
2015年9月フランクフルトのモーターショーの最中にディーゼルエンジン車の排出ガス不正がアメリカの行政機関により公表され、CEOをはじめとした上役を刷新して、同年10月には電動車へのシフトを発表しました。
当時、トランプ政権に変わることで、環境政策が後退するという見解があったため、VWとしてはEVシフトを押し進めてグローバルのイニシアチブを狙いたいという思惑がありました。
また、2025年までに電動車市場で世界一の目標を掲げており、2030年までに電動化領域に約2兆6000億円以上を投じるとともに、中国、欧州、北米でのバッテリー調達確保に向け2025年までに6兆5000億円以上を投じる計画を明らかにしております。
VWグループは、大衆車セグメントでVW、プレミアムセグメントでアウディ 、富裕層向けではポルシェがそれぞれEVシフトを進めることでグループ全体でテスラ包囲網を固めるとともに、電動車市場の世界トップを狙っています。
「I.D」コンセプトを発表し、EVをエコな車として販売するのではなく、未来的なデザイン、自動運転のような最新技術、モーターによる加速性能を打ち出すことで全く新しい車としてEVを訴求しようとしております。
☆ダイムラー
2016年9月にCASE戦略を発表。2017年発表では、2022年までにメルセデスブランド全車種についてEV、PHEV、HVモデルを揃えて2025年までに生産台数の25%を電動化すると発表。
EVブランド「EQ」を立ち上げ、CASEを統合した次世代EVを武器に、プレミアムセグメントのEV市場のリーダーとなることを目指しています。
燃料電池車にも力をいれていて、全方位型のエコカーの開発を行なっております。ダイムラーは、プレミアム市場でのシェアをテスラに奪われており、このプレミアム市場の奪還がダイムラーにとってのEVシフトの大きな原動力となっています。
☆BMW
EVモデルの「i3」と「i8」を合わせた累計販売台数は、10万台程度であり思ったように伸びていません。そのため、他欧州メーカーに負けじとラインナップ強化として、2025年にはトータルで25車種の電動車を投入し、うち12車種のEVを展開すると発表しています。
また、BMWが、多くのリソースを割いて開発を進めているのが「iNEXT」といった自動運転EVです。VWと同じように、EVを電気で動く車としてではなく、未来の最先端技術が統合された車として提供することで高価格帯での拡販を進めていく狙いです。
●中国
☆Geelyグループ
大手メーカーの中でいち早くVolvo社買収しました。2020年に向けて、約280万台の販売台数を計画しています。2013年のVolvoと共同でスウェーデンに研究開発センターを設立し、ノウハウを取得するために、車両プラットフォームを共同開発しました。
また、特徴的なのはパワートレイン戦略としてPHEVやEVだけでなくHVにも注力している点です。EVはユーザーに受け入れられるまでに時間を要すると考えており、年々厳しくなるCAFEと大型車を好む中国市場での販売台数の目標達成を両立するためにはHVは欠かせないという見立てをしております。
☆BYD
中国系EVメーカーのトップランナー。もともと、中国でモバイル用リチウム電池を作っていたメーカーです。そのメーカーが、10年余りで大手電動車メーカーに変貌しました。はじめは、世界初のPHEVを量産販売して注目を集めたが、品質があまりに低く、販売台数は100台にも満たない状況でした。しかし、2013年頃政府がEVを推進する政策を打ち出し始めてから潮目が変わり、車両の利用状況やユーザーの利用体験などのフィードバックを分析して、次モデルの開発に活かしたり、市場投入後のPDCAサイクルを超高速で回すことで、自動車メーカーまでの道を高速で駆け上がりました。
☆SAICグループ
VWとGMという両巨頭とのJVを保有しています。当初は、海外ブランドの買収を通じてガソリン車の成長を目指してきたが、うまくいきませんでした。
風向きが変わったのは、2016年で、携帯や各種ネットワークとつながる車、いわゆるICVが中国の若い消費者にとって魅力的に映ったため販売台数が伸びました。また、SAICは中国メーカーの中で唯一FCVの量産を計画しています。EVシフトにより、サプライヤー部品のセットアップメーカーになってしまうことを危惧して、FCVにおいて従来車の開発と同じように燃料電池中心としたすり合わせを実現して開発のイニシアチブを獲得することを志向しています。
●アメリカ
☆テスラ
イーロンマスクが率いるテスラは、EVシフトの立役者と言える存在です。
2017年4月に時価総額でGM、フォードを抜き、一時全米トップの自動車メーカーとなりました。2020年11月の記事では、時価総額は約54兆円に達しています。
テスラ48のEV事業戦略は、①富裕層ターゲットに対するプレミアム車両の提供、②投資費用の早期回収、③ファミリーカーの投入、④バッテリーシステム外販です。
テスラの今後の狙いは、バッテリーシステムの外販です。ギガファクトリーという圧倒的な生産力をもとにバッテリーシステムを他の自動車メーカーやEV企業ベンチャー向けに拡販するという狙いがあります。テスラは車両だけでなく、定置型蓄電池の製造販売を拡大しています。ギガファクトリーの稼働を開始してから、かなりポジティブなバッテリー価格の見通しを発表し、将来的には強豪各社が太刀打ちできない価格帯でのバッテリーシステムを実現した上で他社への拡販を狙っているようです。
☆GM
自信作であるBoltの2017年の販売台数は、テスラの販売台数の半分程度です。思ってもみなかった「売れない、売れても儲からないお荷物車」となってしまっています。
そのような中、GMは2023年までにEV または燃料電池車を20車種投入し、2026年には世界販売台数100万台を目標にしています。
GMがEVシフトを進める理由は、①米国市場におけるテスラの存在感の拡大、②GMの注力市場である中国でのNEV規制の2つがあります。GMは、中国現地に車両開発拠点のPATACを保有しており、中国における車両開発を担っており、今後もこの機能を活かした現地EVの開発が進みそうであり、今後は北米、中国それぞれの開発拠点で現地ニーズに適した車両を開発し、EVシフトを進めていくと思われます。
●日本
☆トヨタ
トヨタは、2019年からスタートした中国のNEV規制により、中国市場でビジネスを継続するためにはEV投入をせざるを得なくなりました。そこで、今まで燃料電池車に注力していたため、EVシフトにいち早く対応出来ていない状況であります。
トヨタは、EVシフトに対応すべく2つの大きな組織変革を実行しました。
①2016年12月に立ち上げたデンソーやアイシンなどの系列部品メーカーの出向者を受け入れた社内ベンチャー組織、②2017年9月にデンソー、マツダ、スズキとともに設立した新会社「EV C.A.Spirit」社のこの①、②の2つです。
EVは車両ニーズが様々なので、多品種少量生産が求められるため、②を設立した目的は、多品種少量生産を効率的に進めることであります。
トヨタのパワートレイン戦力はあくまでの全方位であり、EVと並行してHVや燃料電池車の開発も進めていくスタンスとなります。EVは近距離移動向けの車両として位置づけ、PHEVや燃料電池車が次世代環境車両の柱になると考えています。
また、トヨタは2020年代前半に全固体電池を実現するという目標に向けて、東京工業大学とともに産学連携で開発を進めている。
☆ホンダ
ホンダについてもEVシフトへの対応はトヨタと同じ理由で出遅れたという状況になります。
さらにホンダは、GMと燃料電池車を開発しているため、燃料電池車の開発から手を抜くことが出来ないという状況であります。そのような中、2030年に販売車両のうち3分の2を電動車両とすること
を宣言しました。最も注目度が高いのは、「Honda Urban EV Concept」という初代シビックを彷彿とさせる車両です。
また、ホンダはいままで他社との連携をせず、独自の技術で車両開発に取り組む自前主義へのこだわりが強かったが、2015年に新しく八郷社長になったことで自前主義に変化が表れております。今後もホンダがどのような動きをするか注目する必要でしょう。
ホンダもあくまでトヨタと同様に全方位で、EVと並行してHVや燃料電池車の開発も進めていくスタンスとなります。
☆日産
日産は、日系メーカーにおけるパイオニアとして奮闘してきています。直近では、2022年までに12車種のEVを投入することや2022年の想定販売台数である1400万台のうち3割を電動化することを発表しており、引き続きEVリーダーを維持することを目指しています。
リーフについては、今後も後続距離を延ばすように取り組んでいくと思われますが、e-POWERという技術も将来のEV拡販に向けた1つのステップであるでしょう。駆動は100%モーターだが、エンジンを発電機として使うためEVの欠点を抑えつつ、EVならではの走りを体験できるというものです。
また、EVを電力網に接続して受給調整機能として提供するサービスにも取り組んでおり、この取り組みをすることでEVを活用してお金を稼げるというEVの購入コストを引き下げるメリットにつながります。本ビジネスを確立することで、今後のEVの価格優位性を築き上げることにつながるでしょう。
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