【目からウロコの経済学!】奇跡の経済教室〜戦略編①〜中野剛志

読書

奇跡の経済教室〜基礎知識編〜
中野剛志著

本書は経済学者や官僚でも知らないような高度な内容を、だれでも理解できるように分かりやすく経済学について説明したものになります。
規制緩和、自由化、グローバル化、消費増税全てデフレ下において逆行していることがわかり、目からウロコが落ちること間違いなしです!

【目からウロコの経済学!】奇跡の経済教室〜基礎知識編①〜中野剛志【目からウロコの経済学!】奇跡の経済教室〜基礎知識編②〜中野剛志についてはこちらをご参照ください!

 

第1章 基礎知識のまとめ
よく分かるMMT入門
・MMTが唱える主張は以下である。
「政府とは、通貨を法定する。次に国民に対して、その通貨の単位で計算された納税の義務を課す。そして、政府は、通貨を発行し、租税の支払い手段として定める。
要するに、人々がお札という単なる紙切れに通貨としての価値を見出すのは、その紙切れで税金が払えるからである。」
・まず政府は徴税する前に支出して、国民に通貨を渡していなければならない。なぜなら国民に通貨を渡す前に徴税は出来ないからである。これにより、MMTは税金は政府の財源確保ではないことを示したのである。
詳しくは〜基礎知識編〜参照。

租税の目的は?
①通貨に経済的価値をもたらす。
政府が納税義務を法定すると、その支払い手段である通貨に対する需要が生み出される。徴税のおかげで、通貨に相応の経済的価値がもたらされる。その結果として、政府は通貨は支払うことで、政策目的の達成に必要な財・サービスを民間部門から調達出来るようになる。
⇨具体的に政府が民間に何かの仕事を頼んで、その対価として通貨を支払うことで、仕事を生み出し、失業や貧困を減らすことが出来る。いわゆる景気対策。
②デフレ圧力、インフレ圧力を発生させる。
政府は、租税により通貨に相応の経済的価値をもたらし、その上で税負担を操作することで、物価を上下させることが出来る。
③格差是正など様々なモノを抑制させる。
累進所得税によって、富裕層により重い税負担を課すことで、所得格差が是正される。また、温室効果ガスの排出に対して炭素税を課すと、温室効果ガスが抑制される。

 

第2章 二つの成長戦略 アメとムチ
一国の成長戦略には、2つのタイプがある。1つは、賃金の上昇によって経済成長を実現しようという賃金主導型成長戦略。もう1つは、企業の利潤によって経済成長を実現しようという利潤主導型成長戦略。

アメ型成長戦略
・アメ型成長戦略とは、賃金の上昇を労働者に対するアメにして、国民経済全体を成長させようとするものである。この賃上げが続くことは、延々と高付加価値製品の開発に取り組まなければならなくなり企業にとって悪いばかりではなく労働者の給料が上がり、所得が増えれば消費も増える、その結果、国全体で大きな消費需要が生まれる、そして消費需要に引っ張られ企業は製品を売りまくり、利益を拡大する、といった好循環を生み出す。
・アメ型成長戦略とは、インフレ圧力を発生されるデフレ対策に該当する。
・アメ型成長戦略は、労働組合や国境の壁という制約という仕掛けを活用して経済を成長させる戦略である。このアメ型成長戦略は、第二次世界大戦後から1970年代まで積極的に欧米先進国と日本で行われていた。

ムチ型成長戦略
・労働者保護の規制は弱める一方で、投資家の発言力は強めるような規制にする。株価を下げたくない企業は、投資家の要求に応えざるを得ず、利益を労働者の賃金にではなく、投資家への配当へと回すようになる。
・グローバリゼーションとして、グローバルなレベルで労働者を競争させればいいという発想で、そうすれば賃金は少なくとも理論的には、世界で最も安い水準にまで下げられる。これを底辺への競争と言う。
・ムチ型成長戦略とは、デフレ圧力を発生させるインフレ対策に該当する。平成の成長戦略は、まさにデフレ圧力を発生させるムチ型である。
・ムチ型で厄介なのは、国内の消費需要が伸びないならば、海外市場に打ってでて、海外の需要を取り込めばいい。グローバリゼーションの発想になることである。そして技術力のある企業を買収する。

第3章 ムチ型成長戦略の帰結
・1980年代以降のアメリカ経済は、金融市場の肥大化の結果、資産バブルが起きやすくなっていた。つまり、金融バブルとその崩壊を繰り返しながら、賃金上昇ではなく、負債の拡大に引っ張られた成長を続けたのである。1980年代以降のアメリカのムチ型成長戦略は、アメリカを賃金が上昇しない国へと変えてしまった。
・平成の日本は、アメリカのムチ型成長戦略を手本に、構造改革を始めた。1970年代から80年代、日本の経営は、企業の国際競争力を高めつつ、労働者の雇用の安定を確保するものとして国際的に高く評価されていた。
・バブルの発生は、低金利を放置し続けた金融政策の失敗によるものであり、マクロ経済政策の失敗がバブル崩壊による平成不況をもたらした。
・2001年に確定拠出型年金制度が導入され、従業員は自己責任で年金を運用することになった。これにより、企業はリストラによる人件費の削減がいっそう容易になった。
・少子高齢化による労働力人口が減ったための対策として女性の就業が奨励されるようになった。女性という労働者を増やすことで、賃上げすることなく人手不足を解消しようとしている。女性の就業の促進が賃金抑制の圧力にならないようにしたければ、成長戦略をアメ型に切り替えた上でそうすべきである。女性の次は、老人、次は外国人労働者である。

 

第4章 富を増やす二つのやり方
投資家や経営者にとっては、取り分が大きくなるアメ型よりムチ型の方が望ましい。経済の背景には、政治があるということを忘れてはならない。

ポジティブ・サムとゼロ・サム
・みんなが利益を得ることをポジティブ・サム、他人の富を奪って自分のものにするやり方をゼロ・サムという。
・インフレには、格差を縮小させる効果がある。一方、デフレは、格差を拡大させる効果がある。富裕者層、投資家、経営者の政治的影響力が強い国の財政運営は緊縮気味になるといった仮説を立てることができる。
・水道事業の民営化は、民間企業が水道事業に参入するために、政治や行政に民営化を働きかけていたのなら、その民間企業はレントシーキング活動をやっていたことになる。
・実は日本よりアメリカの方が、個人や企業を縛る規制が多くて面倒なのである。本気で市場に任せたいのならば、規制緩和ではなく、規制や政府介入を増やしたり、強くしたりしなければならない。市場と呼ばれているものも、政府が整備する制度であり、規制なのである。

第5章 レントシーキング活動
・民間企業が事業を行うから、公共部門よりも効率的になるというのは、幻想に過ぎない。なぜなら、ビジネスにおける透明性が高くなく、公共部門は、事業を監視するためのコストを負担することになるからである。
・レントシーキング活動とは、自分の利益を増やすために、ルールや規制あるいは政策の変更を行うように、政治や行政に働きかける活動のことである。そしてレントシーキング活動は、デフレ時に発生しやすくなる。
・殺伐としたゼロ・サムの世界では、国民の間に俺は一生懸命働いているのに報われないが、あの連中は規制に守られてのうのうと暮らしているといったルサンチマンが蔓延しやすくなる。
・TPPを推進する論理と、移民政策を推進する論理とは、イデオロギーの根が同じである。竹中平蔵氏も熱心な移民推進派である。

 

第6章 大失敗した行政改革
・本来であれば、中立性を旨とする行政は、森友学園や加計学園といったレントシーキング活動に対して阻止しなければならない。
・日本は、全雇用に占める公務員の比率は、1990年時点において、最下位。そして、日本は規制が多い、強すぎるといった話も間違い。また、官僚主導というのも大きな間違いで政党優位である。
・1985〜86年の行政学者の意識調査の結果から、調整型官僚とはタイプの異なる吏員型官僚の存在が明らかとなる。この吏員型官僚とは、政治家が政策を決定し、官僚はそれを執行するだけという教科書に書いてあることを額面通り行う官僚である。
・改革派は、官僚の力は強すぎると誤解し弱めようとし、内閣人事局などというものを創設しようとした。そして、内閣人事局が出来た結果、官僚派は大幅に無力化され、ついには、行政の中立性や公平性を保つことすら難しくなってしまった。
・レントシーキング活動において、行政の中立性や公平性は邪魔であり、官僚を無力化することが決定的に重要である。ムチ型の構造改革に、行政改革も含まれていたのである。

第7章 諸悪の根源
・国が地方自治体をPFIへと鞭打って、民間企業にビジネスチャンスを与え、その犠牲となるのは、一般市民である。
・移民を入れなくとも、人口減少や人手不足の問題を解決する方法はある。設備投資や技術開発投資を積極的に進めて、生産性をあげれば問題ない。企業が投資を怠ってきたのはデフレであり、需要不足であるからである。
・日米欧の1995年⇨2017年の人口増加率とGDP成長率を見ると、人口成長率が低いから、GDP成長率も低くなるとは言えない。それでも、人口減少が問題だと言うのであれば人口を増やすような政策を実行すればよい。
・デフレを克服し、経済成長を実現し、さらに少子化対策のための公共サービスを充実させれば、人口の減少の程度はかなり軽減出来る。
・少子化対策のための財政支出を惜しみ、移民を流入させれば、デフレが続いて、財政赤字は減らない。そしてまた、人口が減少し、移民のさらなる流入を余儀なくされる。

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