【仕事の勝ち方】日本電産 永守重信が社員に言い続けた仕事の勝ち方

読書

本記事は、日本電産の創業者であり現会長である永守重信氏が「社員に言い続けた仕事の勝ち方」という本についてまとめたものになります。
永守重信とは一体どんな人物なのか、日本電産って一体どんな会社なのかについても触れたいと思いますのでよろしければ是非ご覧になってください!!

 

●永守重信氏とは
実業家で、日本電産創業者であり現会長になります。
2021年3月の総資産は87億ドル、1ドル110円とした場合、日本円で9570億円になります。
日本長者番付でなんと第4位になります。
京都府出身、1944年生まれで現在76歳。音響機器制作会社であるティアックに就職後、同子会社である山科精器取締役といった2つのサラリーマン時代を経て1973年、28歳で自身を含む4人で日本電産を創業しました。以降日本を代表する小型モータ製造会社に育て上げ、モーター事業において世界トップシェアの業績を誇る世界的な企業に育てあげてきました。そして、永守氏は優秀な技術を持ちながら経営不振に陥った企業を次々買収し、子会社化して再建させることで知られております。(ちなみに長男も次男も社長。長男はレック株式会社取締役社長。次男はエルステッドインターナショナルの代表取締役社長。)

 

●日本電産とは
日本電産は世界一の総合モータメーカーになります。ブラシレスDCモータやHDD用スピンドルモータなど数多くの世界一のシェアを確保している製品を開発しております。「軽薄短小」、「省エネ」、「M&A」を軸に規模をどんどん拡大しようとしているようです。また最近のトピックとしては、CEOとして2021年6月に元日産出身の関氏が就任しました。(会長は引き続き永守氏)
これは、2019年量産したEV用トラクションモーターであるE-Axleに特に注力するという意思が全面に溢れております。このE-Axleの量産によって、走る、曲がる、止まるについて全て網羅したモータを日本電産は展開することになりました。

●EV用トラクションモータで売上高10兆円へ

日本電産の中長期成長戦略として、2030年に売上高10兆円を目指しているようです。その目標達成に向けて一番大きく力を注力しようとしているのが、2019年量産したEV用トラクションモータになります。これに注力することで目標に向けて邁進するようです。では、EV用トラクションモータであるE-Axleについて簡単にご紹介します。
まず、モータとインバータそしてギア(減速機)を一体化した三位一体の構造となっており、小型軽量、高性能、高品質のモーターになります。ギアは三菱重工工作機械を買収し、その技術を活かして内製化を図っております。またユニークな冷却方法として、モーターの冷やしたい所へ直接冷却油をかけることが出来る「油冷構造」を採用しています。具体的には、モータ上部からオイルクーラーで冷やした油を吹きかける構造とモータシャフトから遠心力で勢いよく油を噴き出して巻線端部を冷却する構造の外側と内側から冷却可能な「2way油冷構造」というものになります。このE-Axleは2020年12月時点で10万台生産中とのことです。2030年にはE-Axle の生産台数は1000万台を超える計画で、日本電産では2025年を「EVの分水嶺」と捉え、2030年にはトラクションモータで世界シェア40〜45%を獲得することを目標に、研究開発を加速し、世界各地で量産体制構築を急いでいるようです。

 

●本書に入る前に
永守経営は、社員の士気の高さ、つまりやる気を何より重視します。
1980年代から1990年代にかけては、ハードディスク用の精密モーター市場を徹底したコスト削減としたたかな戦略眼で席巻し、2000年代に入る頃からは、海外企業のM&Aで車載、家電、商業、産業用モーターへの事業ポートフォリオの拡大・転換を果たしてきました。1970年代以降創業の製造業では、唯一の1兆円企業になります。
また、日本電産独自のコスト削減策として、KプロとMプロがあります。
Kプロとは、人件費、材料費、外注費を除く、事務用品費、光熱費、出張費、物流費、交際費などをゼロから見直し、売上高1億円あたり500万円という枠を設けて削りにいくというものになります。
Mプロとは、資材費削減プロジェクトのことですが、資材調達先などに値引き要求をするような単純な資材費削減策ではなく、次の3点となっています。1つ目は、複数の資材調達先の中から供給力の高い1社を選んで調達量を増やし、調達価格を引き下げる。2つ目は、世界中から、より低価格の資材を探し出す。3つ目は、生産効率性を高めるため設計や製造法を見直し、少ない資材で製造できるようにする。になります。

●永守重信が言い続けたこと
・1番以外はみなビリと同じである。
一時的に自分を励まし、その気になることは誰にも出来る。しかし、それを片時も忘れず、意識の底に刷り込み続けるのは容易なことではない。当社は常なダントツの1位を目指している。

 

・人の能力の差はせいぜい5倍まで。意識の差は100倍まで広がる。
従業員、社員の意識が会社を変える。そのもとは、経営者の意識の高さが鍵になる。

 

・単純だけど、コミュニケーションほど大事なものはないといっていいくらいだ
永守は、買収してグループに入れた企業も国内外を問わず、社長や役員だけでなく、中間層、若手までとにかくよく話す。

 

・一流企業と三流企業の差は製品の差ではなく、社員の品質の差である
再建の際に三協精機の3Q6S担当者は日本電産のグループ企業に見学に行き驚いた。工場では、ラインごとに従業員の技能レベルなどが掲示板に張り出されており、一方では週次の業務計画や精算実績も分かるようになっていて両者を組み合わせて人員配置を瞬時に可変出来るようにしている。

 

・人生はチャンスをどう見つけるかという戦いだ
永守は、サラリーマン時代に起業の資金を貯めるため、残業代だけで生活し、本給は貯金した。永守が企業再生で重視するのは、ただ業績を回復させるだけではなく、社員と幹部に前向きな気持ちを持ってもらうことである。

・汚い工場からは、決して良い製品を生み出すことは出来ない
買収した会社では、幹部だけで1年間、オフィスのトイレ掃除をした時期もあり、永守は今もトイレの清潔さには厳しく目を光らせている。

 

・人を見出し、育てるには成績というモノサシだけではなく、見えないものを測るモノサシを持たなければいけない
かつて、永守は、早飯試験、便所掃除試験、大声試験、到着試験を採用基準としていた。1点だけでも人に負けない面を見つけようという思いからであった。

 

・挫折を経験した人間こそ可能性がある
永守は中途採用をする際に、前に働いていた企業の社風も参考にする。勤めていた企業が破綻したり、業績悪化でリストラされたような人材は貴重だと永守はいう。

 

・1人の天才よりも、100人の協調出来るガンバリズムを持った凡才が会社を担っている
必ず利益を上げるという意識、やり抜く精神、責任感を社員に広く徹底して浸透させ、結束して戦うことを教える。

 

・上司は部下に対する御用聞きにならなければならない
永守が問題にするのは上司が聞かないことだ。永守に言わせれば、上司の重要な仕事は悪い報告をいかに早くさせるかだ。部下から悪い報告が来なければ、上司は自ら御用聞きとなって聞き取りに行かなければならない。

・1匹のオオカミが率いる49匹の羊の集団と、1匹の羊が率いる49匹のオオカミの集団が戦ったなら、オオカミがリーダーの集団が勝つ
これは、ナポレオン・ボナパルトの言葉だと言われる。永守が言うのは、それほどリーダーの役割は大きいということである。強いリーダーは、羊の中にある隠れた力を引き出し、戦いに勝てるようにしていく。管理職というリーダーは集中力を高め、部下に目を配り、戦い方を常に考えられるように自らを鍛えていかなければならない。

 

・企業の成長の第一歩は利益だ
2、3%などという低い利益率ではだめで、2桁、15%は必要だという。それだけ利益をあげれば、設備や研究開発、人材への次の投資が可能になり、売上高を伸ばすことが出来る。売上高を伸ばして利益を上げるのではない。利益を上げるから売り上げも増やせると考える。自ら考え、動く社員を育てること、コストや利益に対する社員の意識を高めることが重要だとする。

 

・シェアがコストと人材をつくる
まずシェアをとること。高シェア製品をたくさん持てばいい人材が集まる。高シェア→設備稼働率上昇→資産効率向上→利益増→営業キャッシュフロー増になる。

 

・脱皮しないヘビは死ぬ
企業は存在する限り常に成長を続けなければならない。企業が成長し続けていくために最も大事なのは、自ら不断に姿を変えられる力だと永守は言う。
1978年にアメリカでハードディスクの駆動用モーターの開発案件が来て、フロッピーディスク全盛から新たに出てきたハードディスクならチャンスと思った永守は、猛烈に動き出した。
しかし、FDB(流体動圧軸受)の重要性が急速に高まる中、FDBの軸受の精密部品の加工技術がなかった。そこから永守は、M&Aを積極的に行っていく。

 

・100年後も成長する企業になる
今までの精密モータ一本足から車載、家電、商業、産業用モーターなどを加え、総合モータメーカーに転換を図った。2006年に、フランスの自動車部品大手、ヴォレオの車載モータ事業を買収。精密小型モータ事業は、成熟化していく。それがまだ好調なうちに、事業構造を変えることで将来の成長力をさらに付けていくという永守の一早い行動がこの大胆な動きのもとにある。外からは順調に成長してきたように見えて、実際は環境の変化に応じて事業の作り替えをし続けてきたからこそ、ここまで伸びてきた。

タイトルとURLをコピーしました