【今を生きる人に向けて】~21世紀の資本~トマ・ピケティ

読書

21世紀の資本 トマ・ピケティ著
『資本主義社会を疑え』
『世界中で格差がどんどん広がっている』

本書の内容をざっくりまとめます。
(※ネタバレ含みます。)
最後に感想書きました。

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21世紀の資本 [ トマ・ピケティ ]
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●3つの式と要旨
① r(資本収益率)>g(経済成長率)
・現在は資本収益率rが経済成長率gより大きく、このままでは資本による所得のシェアがどんどん増えて貧富の差が拡大する。
・生まれながらの貧富の差によって将来が決まってしまっては国の衰退につながりかねない。
・経済成長率gはイノベーションの速度が落ちると通常1%を大きく上回ることはない。
・資本収益率rは技術的、心理的、社会的、文化的要因に左右され、それらがまとまって約4-5%の収益率をもたらしてきた。
・この資本収益率rと経済成長率g の格差は今後も拡大していく。

② α= r ×β 資本主義の第1基本法則
α(資本所得/ 国民所得)= r(資本所得/国民資本)×β(国民資本/ 国民所得)
α:国民所得における資本シェア(%)、100-α:国民所得における労働シェア(%)
r:資本収益率、β:資本/所得の比率
・βはある意味、その社会がどれほど強く資本主義かを表している。
・βが増えればrは減る方向になるが、rが大幅に低下するとは限らない。
・rが低下した場合、上昇させようとして投資を巡って戦争を引き起こしたりする可能性がある。

③ β= s/g 資本主義の第2基本法則
β(国民資本/ 国民所得)=s(貯蓄率)/g(経済成長率)
β:資本/所得の比率、s:国レベルの貯蓄率、g:経済成長率(生産性の成長率+人口増加率)
・βの上昇の抑止には、gの上昇が不可欠であり、具体的には生産性の成長をしなければならない。
・gの上昇をしなければ、最終的に戦争に繋がりかねない。

 

●要旨
・人口増加と経済成長が格差縮小に貢献する。
・皮肉なことに戦争や大不況により格差は縮小し、外的要因がなければ格差は拡大し続ける。
・本書の研究の目新しさは、資本と労働の分配と近年の国民所得の資本シェアの増加の問題を、18世紀から現在にいたる資本/所得比率の推移に注目して広い歴史的背景の中で捉えようとした最初の試みだという点である。
・資本社会は完全無欠のものではなく、資本所得と労働所得の比率を常に確認し、何が1番よい比率かを考察することが重要である。
・累進相続税など以前より極度に富が集中しないような構造変化、世襲中流階級の出現が大きな変化であるが、現状のr>gは再び資本主義社会におけるトップ層の資本所得が増加し、格差が拡大していくことを筆者は懸念し警笛をならしている。生まれながらの貧富の差によって将来が決まってしまっては国の衰退につながりかねない。
・そしてそれを解決するのは、累進資本税のみであるということを提示している。
・1970年代以降アメリカは“スーパー経営者”の出現、ヨーロッパは資本所有による“不労所得者”の滅亡によりそれぞれのトップ1%の国民所得シェアに大きな違いが見られるようになった。
・どんな時代、どんな社会でも口の貧しい下半分は実質的に何も資本を所有していない。
・現在世界大戦がないことは非常にありがたいことであるが、同時に資本格差の拡大が起きる可能性があり心配である。
・世界の人口増加も徐々に停滞し、また、貯蓄率は長期的には10%に安定するため、21世紀後半の世界の資本/所得の比率βは700%まで上昇すると予想される。
⇒経済成長率の低さがいかに格差の拡大に影響するかを示している。

 

●各国の変遷と特徴
A.フランス(旧世界)
・第1次世界大戦前の1910年頃にはトップ10%が国富の90%を所有していた。
・フランスは革命前も革命後も資本の集中が特徴の世襲社会であり、相続と結婚が重要な役割を果たし、労働や勤勉では得られない快適な生活水準を確保していた。
・フランス、イギリス、スウェーデンの全てにおいて1970年以降トップ10%の国富の集中が再び戻ってきた。これは、世襲的中流階級の出現が要因である。
・1932年フランスのトップ1%、0.1%と上がるにつれて労働所得は目立たなくなり、資本所得がますます大きな割合を占めるようになる。
一方で、1932年フランスでは不労所得生活者が、没落して経営者より下に下がった。
不労所得生活者復活を食い止めたのは、所得と相続財産に対する累進性の高い課税である。
・1940年代戦後、総所得におけるトップ10%のシェアは下がったが、総労働賃金のシェアは現在まで一定である。これは、資本のシェアが下がったために総所得が下がったに過ぎないからである。
・現在2010年、資産トップ1%が総資産の20%を所有している。
・たくさん蓄えて、ゆっくり成長する国は長期的には莫大な資本ストックを蓄積することになる。ヨーロッパは人口停滞、アメリカは上昇。
つまり、フランスに限らずヨーロッパの資本/所得の比率が21世紀に高い水準になるのは、低成長時代に復帰したからである。

B.アメリカ(新世界)
・1780年には人口300万人以下だったのが、1910年には1億人、2010年には3億人以上、つまり2世紀で100倍増したことになる。
・北米の資本が非常に珍しい特殊な形をとった理由は3つ。
①土地が豊富でコストがあまりかからなかった。
②奴隷制が存在した。
③果てしなく人口増加が続きヨーロッパに比べて資本の蓄積量が少なめだった。
・アメリカの資本/所得の比率はヨーロッパに比べてはるかに安定している。それがアメリカを資本主義が第1であり、資本主義社会をリードさせている所以である。
・アメリカでは1950-1980年の間に格差が最も小さくなった。トップ10%が、国民総所得の30-35%を得ていた。しかし、1980年以降アメリカの所得格差は急上昇し、トップ1%は45-50%にまで増えた。2008-2009年リーマンショックがあっても格差の拡大は止まっていない。
・アメリカの1970年代以降の格差拡大の原因は資本格差ではなく、賃金格差拡大によるものである。大企業の重役達が凄まじく高額の報酬を受けとるようになったせいである。しかし、1929年はトップ1%、2007年はトップ0.1%の超トップ層は資本所得が労働資本のシェアを超える。
・アメリカの人口におけるトップ1%、0.1%の賃金急増は大卒かつエリート校で何年間も学び続けた人だけに見られる極めて固有の現象であり、注目すべきは教育的要素ではない。
非常に高い所得と非常に高い給与の増加はスーパー経営者によるものである。
・アメリカにおける格差拡大が金融不安の一因となったのは間違いない。1928年、2007年にトップ10%の国民所得のシェアがピークになったからである。銀行や金融仲介業者が甘い条件で融資することで金融不安は生じる。
・アメリカ初「億万長者税」を導入したニュージャージー州が富裕層増税に動いたのには、貧富の差を縮める税制対策を求める進歩派の声が全国的に高まってきたという事情もある。黒人やラテン系のコミュニティはパンデミックで特に深刻な被害を受けており、コロナ禍で格差は一段と拡大した。

C.日本
ピケティの21世紀の経済成長率g が人口減少を主要因として低下し,βの増加によってαが上昇という資本分配上の不平等が拡大するという指摘は,日本では適用出来ない。
日本は大幅に貯蓄率sも減少した。実はそれは日本のようなバブル崩壊過程が長期に持続することを、前提にも予測にもしていないからだと思われる。
日本の経済現象は資本主義の異常な形態で,あくまで例外的である。
日本は、まさかのピケティの理論に沿わない異常な国である。
現状、gもsも減少し、β一定,その結果,資本分配率は一定となり,α増大による資本格差の拡大は起こっていないという日本は資本格差の拡大が進んではいないと見られる。

 

●まとめ
・資本主義社会におけるトップ層の資本所得が増加し、格差が拡大していくことを筆者は懸念し警笛をならしている。
・そしてそれを解決するのは、累進資本税のみであるということを提示している。

 

●感想
地球規模としては、
筆者も述べていますが、格差を全くなくすということは私も賛成しません!
しかし、生まれながらに将来が決まってしまうという世の中では国の発展にも悪影響です。
筆者は、累進資本税を課税することが不可欠であると語っております。
今後も、世襲制で決まってしまう格差を是正するために、知恵を絞らないといけないと思います。

個人規模としては、
改めて、資本収益率rはあくまでお金の収益率ではなく資本の収益率です。
資本はお金ではありません。資本とはお金を投じて生産された固定資産です。
なので、自分自身の知識や経験や技術が資本であると言うことも出来ます。
キャリア、ノウハウ、人脈、知識など、自分の価値を高めてくれるものを資産と捉え、その資産を活用して得られる収益を「r」と捉えられます。そうすれば、現在勤めている会社の昇進速度を高め、かつそれ以外の収益を得られるチャンスがあります。
自分としてもこのブログを通じて自分の知識や経験を発信することで、資本収益率rを拡大することは出来ないかと考えております。
1人1人が知識や経験などを活用することで結果的に、マクロ全体としての資本収益率rを上昇させることが出来るかもしれません。
是非皆さんも自分自身の知識や経験や技術を共有し発信していきましょう!

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