今のコロナ禍で大活躍する!?ケインズ経済学についてざっくり解説!

教養/豆知識

ケインズという名前を知っている方はおそらく政治学に詳しい方だと思われます。アダム・スミスやカール・マルクスに比べるとそこまで有名ではないかもしれませんが、経済学において外すことが出来ない人物になります。今のコロナ禍においても、改めてケインズの経済学が見直されることとなり世界を救うきっかけとなるかもしれません。
今回は、そんな3大経済学(アダム・スミスカール・マルクス、ジョン・メイナード・ケインズ)の一つであり、不況時における政府の介入を訴えたいわゆる大きな政府を提唱したジョン・メイナード・ケインズについて簡単にご紹介したいと思います!

 

●プロフィール
名前 ジョン・メイナード・ケインズ
出身 イングランド東部ケンブリッジシャーの州都ケンブリッジ
出世 1883-1946(62歳没)
イギリスの経済学者、官僚、貴族
「大不況は政府が制御せよ!」

 

●半生とケインズ経済学について
ケインズは、1883年、イギリスの上流階級として生を受けた。ケインズは、典型的にもケンブリッジ大学の経済学者の子として生まれ、ケンブリッジ大学の学生として人生を始める。彼は人生の前半を長年に亘って同性愛者として生き、相手の男達の名前を細かく記録するような人間でもあった。彼の同性愛による人間関係は非常に長く広範であり、欧米の経済学者の中には、そのことがケインズの経済学と無関係ではないと評する者がいる。また、生涯子供を持たなかったことがケインズの経済学に未来展望の視点が欠けている理由だと分析する者もいる。
ケインズは、生涯を通じて極めて強力な”優生学”の先導者であった。ケインズがダーウィン進化論から派生した優生学の信奉者であった点は、ケインズ経済学を考える際に軽視することは出来ず、際立った人種差別主義者であった。要するに、誰もが敬意を払うケインズ経済学なるものは、ハナから黄色人種、褐色人種、黒色人種を対象にしていなかった。イギリスの高名な歴史学者H.G.ウェルズと長きに亘って親密であった。ウェルズはタイムマシンや透明人間などの作者として日本でも広く知られている。2人はダーウィン進化論という科学的な見方、遺伝的に優れた者の子は優れており、遺伝的に劣った者の子は劣っているとした。これは、当時は強い影響力を持って世界に拡がっていた。後にこの”優生学”は、ナチスが人種の絶滅を企図したことが厳しく批判され、優生学は1940年代までに科学的思想としては失敗に終わる。ケインズは、「世界人口が多すぎる問題は有色人種を減らすことによって解決出来る」、「女性は男性より劣った性である」とも述べている。当時はこの優生学的思想は少しも珍しくなく、この思想を法制化して劣性の遺伝子を持つとされる者の断種、いわゆる手術がヨーロッパやアメリカで広く行われていた。
こうした見方とは逆に、遺伝的に優れていると見られる男女間で子孫を残す運動も拡がった。ナチスのアーリア人種思想であり、中国やインドではこれと類似した見方を定めた法律や制度が現在も存在する。20世紀に葬られるかとも見られたが、21世紀も精子銀行やデザイナーベイビーなどともに新しい生命科学として世界的に復活している。

ケインズが見る大衆の金銭感覚として、世界中のあらゆる経済学者やエコノミストがケインズ経済学を論じてきたものの、一般人には何がこの理論の核心なのかはっきりしない。一国の経済をトータルな視点で扱うので、ミクロ経済学の対立概念としてのマクロ経済学ということになる。ケインズは、「不況を抑え込んで失業率を引き下げるには、大規模な政府支出によって総需要を増やせば良い」と言った。しかし、いわゆる大きな政府とは違う見方もある。ケインズ理論が一般人にとって興味深いところは、主に大衆、すなわち社会を構成する大多数の人々の金の使い方に焦点を当てていることである。
富裕層でも貧困層でもない普通の人々は、自分の現金収入が増えたときに余分の金をどう使うかを心理学者のように分析した。ケインズが独自の経済学を打ち出すようになったのは、世界恐慌がきっかけである。人々が消費を限界まで切り詰めて経済全体が縮小し、世界中に失業者が溢れるようになった理由やプロセスを世界恐慌と併行して考察した。
そして、1936年、52歳の時、世界で最も有名な経済学書である『雇用・利子および貨幣の一般理論』を送り出した。経済学の真のパイオニアたるアダム・スミスのレッセフェール、つまり経済の自由放任主義を引き継ぐ伝統であり何事もなすがままに任せよというもので、何が起こっても放っておけという思想であるが、この見方では、世界恐慌や途方もない失業者の出現はあるはずがない。
ケインズはこの時『一般理論』の中で、近代経済学の歴史上で初めて”レッセフェール”を過去のものとして切り捨てた。そして「自分の考えこそが、経済形態が根底から崩壊することを防ぎ得る唯一の現実的手段である」と宣言し、自分の思想を受け継ぐ者、つまりケインジアンの率いる小集団が資本主義を社会主義やファシズムや共産主義から救う事が出来るというものであった。これは10年ほどでソビエト連邦やその周辺国以外でほぼ全世界で受け入れられた。ケインズは、ほぼ誰も疑問を差し挟まなかった古典派経済学の見方を拒否し、それは誤りであったと言い切った。レッセフェール的な経済原理は、完全雇用という仮想的条件が満たされている場合にのみ正しいと言った。この場合の完全雇用は、働く意思と能力を持つ者がみな仕事を持っている状態のことである。

では、何が原因で不況が起こると主張したのか?その理由は、ある国のGDPに対する需要が不適切な時だと述べている。ケインズが言った需要が不適切な時と言ったのは、作ったものは全て売れるという法則があったからである。ケインズは、このいわゆる”セイの法則”を批判し、否定した。
そして、経済が好調なときには大衆は、ユーフォリア的に、いわば客観性を失って舞い上がり、無内容な爽快感を抱くようになると述べた。何に対しても楽天的で何事も苦にしないので人格が低下するとも述べている。ところがこうした大衆は、不況に襲われると、明日への不安や恐怖からほとんど消費しなくなり、自律的回復は難しくなる。そこで、外部的な力としての政府支出だと主張した。
1929年の世界恐慌時、失業率は25%であり全家庭の1/4は生存ギリギリの極貧状態であった。そして、世界に革命の気配が漂い始める。しかし、それは彼の考える自由の探求ではなく、共産主義者や民族主義者が独裁を求める暴力革命であった。「貯蓄は他の誰かが借り出して消費に回していると見ている。そのため、購買力を上回る過剰生産はおこりえず、作ったものはすべて売れることになる」という古典派の教養は完全に違っていた。
ちなみに、1933年、ルーズベルト大統領はニューディール政策としてテネシー川領域開発や銀行規制、企業への貸付、社会保障の充実、生産物調整による農産物価格の安定などの政策を実行し、世界恐慌への対策を行った。
では、どうすれば失業問題を解決できるか?ケインズは、それを可能にする唯一の方法は総需要の管理であると述べた。ケインズによると、労働者はマネー幻想に陥っており、通貨の価値が下がってもさして気にしないのにも関わらず自分の賃金が下がることをひどく嫌う矛盾した心理を持っているという。こうした心理により、名門賃金が下がると人々は支出をしなくなる。その結果、需要が停滞して経済活動が低下し続けデフレ・スパイラルが起こってしまう。そして、企業は必要な資金を得る手段を失うため労働者を解任せざるを得なくなる。それが際限なく拡がったのが、世界大恐慌である。そして、ケインズは世界恐慌のような巨大な負のスパイラルを止めるには、政府からの介入以外方法はないと結論づけた。そして、極めて”大規模な公共投資が不可欠と述べたのである。

そして、大きなチャンスがアメリカにおいてやってくる。ルーズベルト大統領にこの理論を手解きしたのがケインズである。そして、先に述べたニューディール政策が行われることとなる。そして、世界は第二次世界大戦に突入し、アメリカは国中の生産力と何百万人もの労働者を動員して兵器生産などあらゆる戦争準備を始めなければならなくなり、戦争が途方もないスケールの公共投資、前例のない大きな政府を強要し、恐慌から一転して完全雇用を実現することとなる。戦争準備と戦後復興によってアメリカ経済は非常に活気付いたが、これをどこまでケインズ経済学の実践の成果と見ればよいかは見分けが困難である。
むしろ、ケインズの手法はヒトラー率いるナチス政権によって実行された。ケインズ自身がドイツ帝国銀行総裁のヤルマール・シャハトに会ってアドバイスしたからである。これにより、1934年から開戦までの数年間、ドイツは完全雇用を達成した。しかし、これもアメリカの時と同様、戦争ゆえに起こったことであり、ケインズ理論との関係は不確かなままとなっている。
1936年、52歳で先に述べたように『一般理論』を発行する。しかし、これはカール・マルクスの『資本論』のように記述の大半はまとまりがなく、生半可なメモの寄せ集めのようだとも言われている。1946年、62歳でケインズは心臓疾患が悪化し、死去する。ケインズが死去した70年余りが過ぎた今なお、ケインズ経済学なるものは賛否両論で評価が定まらない。

 

●ケインズ思想の特徴
①社会経済を大きな目(マクロ的に)で見る。
つまり経済学のミクロ的な概念である消費、貯蓄、所得、支出、雇用の全体を元に経済を評価する。
②所得と支出、それに雇用の総量を決める基準は有効需要である。有効需要は、「企業の生産活動」から生じる所得が支出されることによって生み出される需要のこと。
③経済は本質的に不安定で、好況と不況が繰り返される。これが起こるのは企業の投資が気まぐれに行われるため。
④賃金と価格は構造的に下がりにくい性質を持っている。これらが下がるデフレ現象が生じるのは大不況においてのみである。
⑤以上の理由から、雇用を増やし、価格を安定させ、経済成長を持続させるために政府は経済に積極的に介入すべきだ。とりわけ不況時には財政支出を増やし、減税を実行し、個人消費を増やすように仕向けねばならない。さらに通貨供給を増やし、金利を引き下げることによって投資を促進すべきである。インフレ時にはこれと逆の対策が必要になる。

 

●批判者達が指摘する問題点とは?そして、現状は?
最大の疑問は、「世界恐慌が終息したのは、各国政府が『一般理論』を経済政策に適用したからかどうか」が問題であり、これについて多くの経済学者達がほぼ否定的である。
西側諸国とりわけアメリカ経済を蘇生させたのは、第二次世界大戦と戦後の復興計画である。戦争や天災の後ではどっちみち”大きな政府”がつくられ、経済復興政策が乱発される。これは現在の新型コロナ対策においても同様である。
第二の疑問は、ケインズの『一般理論』の一般は何を指しているかである。ケインズ理論はしばしば不況時の経済学と呼ばれるが、これは誤った解釈で、この理論はあらゆる経済状況に適応する科学的原則と言いたかったのかどうかが問題である。実際ケインズは、政府による経済の持続的管理の必要性を説いている。一部のマネタリスト(マネーサプライいわゆる貨幣供給量が、景気や物価を決定するという経済理論を信奉する人々の総称である。経済政策では、不況になると政府が公共事業などを増加させる「財政政策」があるが、マネタリストはこれを否定する。マネーサプライのコントロールで十分なので財政政策は不要、政府は余計な行動をするべきでないという思想である。)を除いてこの考え方は、現在の大半の経済学者に受け継がれている。
ケインズは、「消費の限界性向」「資本の限界効率」「マネー幻想」などの大衆心理学的な概念と景気循環の持続時間を考え合わせると、我々が経験する社会経済の特徴そのものになると考えた。つまり、我々の社会は雇用と物価が極限まで振れることを怖れて完全雇用状態と生存ぎりぎりの最小雇用状態の中間を行ったり来たりするというのである。そして、ケインズは『一般理論』の最終章で「多少とも包括的な社会主義的投資が、完全雇用に近い状態を確保する唯一の手段であることが明らかになるだろう」と述べている。
この発言の内容は、現在の日本や西欧諸国が多かれ少なかれ実行している政策そのものである。日本のある経済学者は、かつて「社会主義経済が最も成功している国は日本である」と言った。ケインズ経済学はもはや批判や議論の対象ではなく、無味無臭の空気となって人間社会を流れているのではないかと考えられる。

 

●感想
ケインズの思想は難解でどちらともとれるニュアンスの部分があり、いまだに謎が多い内容がたくさんあると言われております。アメリカのルーズベルト大統領におけるニューディール政策やナチス・ドイツのヒトラーの政策などに影響を及ぼしたとされていますが、その効果はいまだ不透明な部分が多く戦争による因子が大きいのではないかという見方が強いみたいです。私もこのケインズ経済学を改めて学んでみると、マクロの視点で世界を見て状況を見て政府が経済に介入するのは、至極真っ当なことだと思いました。今のコロナ禍において大きな政府がこの日本には求められているのではないでしょうか。ケインズが述べた「“極めて”大規模な公共投資が不可欠だ」という言葉はもう一度このコロナ禍で考えてみる必要があると思います。

 

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