iPS細胞について、「聞いたことはあるけど、一体何なのかはちょっと分からないぞ」って方はきっと多くいらっしゃると思います。
iPS細胞には不老不死や、同性同士の子供、絶滅危惧種の復活など夢のような技術がたくさんあります!この記事は、そんな2012年に山中伸弥教授がノーベル賞を受賞したiPS細胞について超簡単に解説していきたいと思います!
●再生医療とは
再生医療には以下3種類があります。
<第1種>
iPS細胞やES細胞など他人の皮膚を使って細胞を培養
<第2種>
幹細胞を使って自分の組織を増やし、自分の組織に移植
<第3種>
PRPの持つ組織修復能力を利用
・幹細胞
幹細胞とは、無制限に自分を増やす自己複製能力を持ち、体のどの部分にも変化出来るという様々な細胞に変化する能力を持つ細胞になります。
トカゲの尻尾を切り取ってもまた生えてくるのは、幹細胞の力が作用しているためです。また、指や手の怪我をした時にかさぶたが出来て治ったり、骨折をした時に新たな骨が形成されて治るのも幹細胞の力が作用しているためです。また、幹細胞にはガンになる心配がありません。後ほど述べますが、iPS細胞やES細胞といった万能細胞に比べると分化能力が低いという特徴があります。
・ES細胞
ES細胞とは、受精卵から作られる”胚性幹細胞”と呼ばれるものになります。ES細胞も多能性細胞ですが、幹細胞ではなく、胚細胞由来になります。
メリットは、受精卵を使用してiPS細胞と同様に様々な細胞に変化する万能細胞であり、ほぼ無限に増殖でき、体のどの部位にも変化出来るという能力があります。
デメリットは、受精卵から作るため、倫理面での問題があります。また、拒絶反応の可能性があります。
・iPS細胞
iPS細胞は、2012年山中伸弥教授がノーベル賞受賞することになった”人工多能性幹細胞”と呼ばれるものになります。iPS細胞は、全ての器官になりうる細胞、何にでもなれる細胞であり、ES細胞同様に万能細胞になります。小文字のiの由来は当時爆発的に人気になったiPhoneやiPodの小文字のiからの影響を受けているそうです。
人間の皮膚から得た体細胞に遺伝子操作を行い、人為的に人間によって作られた細胞を”人工多能性幹細胞”といいます。通常の幹細胞よりも、より多くの細胞に変化出来る能力を持ちます。また、メリット、デメリットについては後ほど解説します。
✓以上、幹細胞、ES細胞、iPS細胞についてまとめるとこちらになります。
(補足)
・PRP治療
10〜20cc自分の血を採血して、その血液中のPRPを抽出し、そして患部に注射することで血小板の成分が組織回復を促すという治療法になります。
●素人の乱暴な作戦による大発見
上述したようにES細胞には、作るときに胚を壊す必要があり、命を犠牲にするとも考えられるという倫理面の問題がありました。
そこで、山中伸弥教授はこうしたES細胞の実用化に向けてどこかの細胞にES細胞で働く遺伝子を入れれば、普通の細胞をES細胞に変えることができるのではないかと考えました。山中教授がiPS細胞の研究を始めた当時は、細胞内で働く遺伝子の量を計る「マイクロアレイ法」が広まり、ES細胞で活発に働く遺伝子が明らかになりつつある時代でした。
こうして山中教授はまず、マウスでは約3万個とされる遺伝子のうち、ES細胞で活発に働く遺伝子を100個に絞りました。次に、この100個について1つづつ遺伝子組換え技術を用いて働きを調査して24個に絞りました。そして、これら24個の遺伝子を、研究材料としてよく使われる、皮膚の繊維芽細胞に、次々と入れていったのです。しかし、24個のうち必要なのはどれか。どんな組み合わせなのか1つ1つの遺伝子の詳しい解析に取り組むのはとても大変です。
そこで”乱暴な素人発想”が大発見に繋がります!まず、24個の遺伝子を”まとめて”細胞に入れる。そして、1個ずつ遺伝子を取り去ってみて、万能細胞ができなかったら、それが必須の遺伝子のはずだという発想になります。24遺伝子を全て入れて1つずつ消していって万能にならなかったのが4遺伝子あり、これが重要な4遺伝子だったのです。
このコロンブスの卵的発想をしたのは、高橋和利さんという工学部化学系の出身で、生物学の知識はほとんどない方でした。当時、奈良先端科学技術大学院大学の山中研究室の大学院生で、入学直後は講義についていけず「何の目的でこの実験をしているのかわからない状態」というほどだったと後に本人が述懐しております。山中教授は「高橋くん、キミはホンマに賢いなぁ」と思わず褒めたといいます。
この24個全て入れるという「乱暴な」作戦は、生物実験のいわゆる素人、高橋さんならではのアイデアだったといえるでしょう。
●iPS細胞のメリット
①病理研究が進みラットを使う必要ない
人間の臓器で研究が可能になります。
②ES細胞の倫理問題を解決
iPS細胞は自分の細胞から自分の臓器を作れるので倫理面の問題がありません。
③拒絶反応が起こりにくい
●iPS細胞のデメリット
①ガン化しやすい
4遺伝子の1つがガン細胞になります。しかし、細胞を人工的に改良しているため、現在では解決策の研究がされております。
②遺伝子操作が困難
●夢の未来
①絶滅危惧種の復活!?
発掘された複数のマンモスの細胞から遺伝情報を解析します。そして、この遺伝情報を書き込んだ核を現代のゾウの細胞に注入してiPS細胞を作成します。そこから精子と卵子を作って受精させ人工の子宮で育てれば、マンモスが誕生するという驚きの技術になります。
②同性同士で子供!?
iPS細胞から成熟型の精子や卵子を作製することで同性間の生殖を実現するというものになります。
③不老不死!?
古くなった器官を新しい器官に置き換えたりして、不老不死が実現できるかもしれません。
●感想
iPS細胞には、まだまだ多くの課題が残っております。しかし、解決していき実現していくことで夢のような未来が待っております。もし、同性同士で子供が出来たり、不老不死などが実現すれば人間のライフスタイルは大きく変化することでしょう。生きている間に実現するかはわかりませんが、iPS細胞はこれからも我々人間社会にとって目を離すことが出来ない存在であり続けるでしょう。