【破壊的イノベーション】業界構造をガラッと変えるメカニズムとは!?

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イノベーションという言葉は誰しも聞いたことがことがあるのではないでしょうか。

イノベーションとは、wikipediaによると、物事の「新機軸」「新結合」「新しい切り口」「新しい捉え方」「新しい活用法」(を創造する行為)のこと。と記載されております。

どうやら新しいものを生み出すということなのでは?とざっくりイメージできると思います。

今回ご紹介したいのは『イノベーションのジレンマ(1997年)』や『イノベーションへの解(2003年)』の著者であるクレイトン・クリステンセンが明らかにした2つのイノベーションになります。

2つのイノベーションとは、”持続的イノベーション””破壊的イノベーション”
になります。

中でもクレイトン・クリステンセンは破壊的イノベーションが果たした重要性について説いています。

そんな破壊的イノベーションについてですが、今から簡単に解説させて頂きたいと思います!
本記事の内容は『破壊的イノベーションが分かる本(秀和システム)』より引用しております。

破壊的イノベータの5つのスキルの記事についてもよろしければ是非チェックしてみて下さい!

 

●従来のイノベーションの定義
クレイトン・クリステンセン(以下クリステンセン)が明らかにした2つのイノベーションの説明の前に従来の経済学者や経営学者がどのようにイノベーションを定義づけていたかについて紹介します。
アメリカの経済学者であるヨーゼフ・シュンペーターは、「不断に古きものを破壊し新しきものを創造して、たえず内部から経済構造を革命化する産業上の突然変異」という表現でイノベーションを指摘しました。
また、アメリカの経営学者であるピーター・ドラッカーは、「人的・物的・社会的資源に対し、より大きな冨を生み出す新しい能力をもたらすこと」と定義しました。

 

●破壊的イノベーションとは何か?
その上で破壊的イノベーションとは何でしょうか。

クリステンセンはイノベーションを
・持続的イノベーション(sustaining innovation)
・破壊的イノベーション(disruptive innovation)
の2つの大別しました。

こちらの2つについての簡単な特徴は以下になります。
・持続的イノベーションの特徴は、常に技術の性能を向上させるイノベーション、より高機能を求める市場に受け入れられるイノベーション、ある技術を生き残させるためのイノベーション
・破壊的イノベーションの特徴は、性能は低いが相対的に価格も安い破壊的技術によるイノベーション、主流市場以外の市場で受け入れられるイノベーション、常に性能向上を目指す持続的イノベーションとは全く異質の秩序を乱すようなイノベーション

破壊的イノベーションの事例としては以下が挙げられます。
Apple:
通話とメールといった単なる連絡ツールでしかなかった携帯電話が、スマートフォンでの高速データ通信の実現とさまざまなアプリケーションの追加によって、財布、書籍や漫画、ゲーム、ナビゲーション、SNS、動画視聴、表計算や文書作成、会議システムといった利用者のニーズに合わせた高度なポータブルツールに進化。
IKEA:
IKEAは元々、スウェーデンの田舎町でカタログ通信販売の会社としてスタートしました。田舎町にあったため、都市部のお客様に家具を販売すると輸送費がかさむだけでなく、椅子やテーブルの足などの家具の突起部分が輸送中に折れてしまうというトラブルが生じていました。この問題に対し、お客様自身で組み立てる家具という解決策を打ち出したのです。その結果、商品パッケージがコンパクトになり、倉庫での大量ストックも可能になりました。

Netflix:
Netflixは、オンラインでのDVDレンタルサービス会社としてスタートしました。しかし、テクノロジーの進化と共にNetflixはストリーミングサービスへと移行し、米国のビデオレンタル大手Blockbusterの主要顧客を奪い、ついには倒産へと追いやります。日本においても、ビデオレンタル大手TSUTAYAは、2010年代前半から店舗数・営業利益が大幅に減少しています。
GoPro:
アクションカメラと呼ばれるGoProは、カメラに必須と考えられていたファインダー(のぞき窓)が無く、プロのカメラマンでもなかなか撮れないようなエキサイティングな動画が、素人でも撮れるという画期的な製品です。YouTubeなどの動画サイトの普及もあり、GoProは新しい価値創造型の破壊的イノベーションを起こし、新しい市場カテゴリを作ったといえるでしょう。
(引用:https://www.essence.ne.jp/service/propartners/column/innovation)]

そして、破壊的イノベーションにも”ローエンド型の破壊的イノベーション”
”新市場型の破壊的イノベーション”の2種類
のパターンがあります。
それぞれの特徴は、
・ローエンド型破壊は、主流市場の下位市場に破壊的技術が根付いて始まるイノベーション
・新市場型破壊は、主流市場とは異なる価値基準の新市場に根付いて始まるイノベーション
になります。

いずれにしてもローエンド(低価格)であることが共通の特徴になります。
以下からローエンド型の破壊的イノベーションと新市場型の破壊的イノベーションについてもう少し詳しくご紹介します。

●ローエンド型の破壊的イノベーション
前章でローエンド型破壊は、主流市場の下位市場に破壊的技術が根付いて始まるイノベーションであると述べました。
市場が余剰満足に陥ると性能が低くても構わないので価格の安い技術を求める層が現れます。
すなわち上位の主流市場に対する下位市場(ローエンド市場)になります。この下位市場がローエンド型の破壊的イノベーションを生む母体となります。

破壊的技術の特徴は大きく以下2つになります。
・短期的には製品の性能を引き下げる効果を持つ。
・相対的に低価格、シンプル、小型、使い勝手が良い場合が多い。
もっと端的に言うと、既存技術よりも性能は低いけど相対的に価格が安いなど別の特徴を持つ技術になります。

この図のローエンド市場ならば破壊的技術を受け入れられる余地はあります。
ローエンド市場に根付いた破壊的技術は上位市場(ハイエンド市場)を目指します。
そして、ローエンド市場に根付いた破壊的技術が急激な性能向上により主流市場を侵食する現象をローエンド型の破壊的イノベーションと呼びます。

持続的イノベーションの特徴は、
「常に技術の性能を向上させるイノベーション、より高機能を求める市場に受け入れられるイノベーション、ある技術を生き残させるためのイノベーション」だと前で述べました。

これは、ローエンド型破壊のプロセスを2次元のグラフで示したものです。点線の矢印は、機能に対する市場のニーズになります。
上にある実線の矢印は、持続的イノベーションによる技術の進展を示しています。矢印の角度が急なのは、持続的イノベーションの方が性能向上のペースが速いからです。持続的イノベーションによる性能向上はいつの間にか利用者のニーズを超えてしまい、時間が経つと性能とニーズが大きく離れやがて満足過剰の状態(余剰満足)に陥る層が出現してしまうのです。
下にある実線の矢印は、性能は低いが価格も安い破壊的技術が投入され、市場での一定の地位を占めるとその後急激な技術開発が起こるという状態を表したものになります。この技術はやがて上位市場も満足させ、やがて上位市場を侵食していくのです。

ローエンド型の破壊的イノベーションの事例としては、1990年代初頭に登場したデジタルカメラが挙げられます。
性能面では、初期のデジタルカメラは従来の銀塩フィルムを用いたカメラに比べると画質が圧倒的に劣っていました。一方、デジタルカメラにはプリントに出さずに画像を確認でき、失敗を気にせず写真を撮れてまた次々とパソコンのハードディスクに写真を貯められるという利点がありました。
価格面では、初期のデジタルカメラの製品単価はかなり高価でした。一方、フィルム代はかからないので長期的に見た場合銀塩フィルムカメラと比較して相対的に廉価でした。

こうした利点を活かしてデジタルカメラはパソコンの周辺装置市場にまず根を下ろしました。
そして根を下ろすともう止まりません。
急激な製品改良が進み、画像品質はどんどん向上しパソコンが普及することでさらに拍車がかかり一般カメラ市場の普及機に並ぶ性能を獲得します。その後も画質が向上し、上位普及機のマニア市場にも食い込んでいきます。現在では、プロのカメラマンもデジタルカメラを利用するほど性能は向上しています。こうして減塩フィルムを用いたカメラ市場はデジタルカメラに駆逐されてしまいました。


減塩フィルムで大きな勢力を誇ったコダックは今はデジタルカメラ市場では見る影もありません。コダックは破壊的技術の前に敗れ去った優良企業といえます。
デジタルカメラは、ローエンド型の破壊的イノベーションの典型例といえます。

●新市場型の破壊的イノベーション
前章で新市場型破壊は、主流市場とは異なる価値基準の新市場に根付いて始まるイノベーションであると述べました。
人は何かに満足すると今度は別のニーズを満たしたくなります。こうした新たな価値基準に対応した技術を投入してニーズを満足させることが新市場型の破壊的イノベーションになります。
クリステンセンは、ローエンド型の破壊的技術に加え新たな価値基準で従来の技術よりも優れている点が新市場型破壊だといいます。

新市場型の破壊的技術の特徴は、
①新たな価値基準では従来の技術に勝る
②使用コストが高い場合もあるが、販売単位あたりの価格が低い
③無消費をターゲットにする
になります。

新市場型破壊をより深く理解するには、先ほど述べた2次元のグラフにもう1つ軸を追加して3次元で考える必要があります。

この3番目の軸は多様な価値基準の軸と表現出来ます。
グラフ手前に表した点線の矢印は、異なる価値に求められる性能で時間の経過とともに徐々に上昇します。
グラフ手前の実線の矢印は、新市場型の破壊的技術を示しています。この技術が進展することで、新市場型の破壊的イノベーションが起こります。
この3軸の方向はまだ製品やサービスが存在しない、存在していても極めて未熟な状態です。
クリステンセンはこのような消費が成立していない状況を無消費と呼び、まさに新市場型破壊の競争相手は無消費になるのです。無消費の典型は誤解恐れずに言えば、お金やスキルがないために解決策を手に入れられずにいる人々です。この層に問題を解決する破壊的技術を提供すると、性能が低くても価格が合理的ならば、スムーズに受け入れられる可能性が高くなります。

新市場型破壊の基本的なプロセスは、ローエンド型の破壊的技術と同様、技術の改良が急激に始まり、全く新たな価値基準に対する市場のニーズを十分に満足させる領域まで技術の改良が進みます。そして、技術の性能が向上するに従い、やがて既存の周辺市場も魅了する技術に成長し、場合によっては既存市場から新市場へと顧客が流れ込む現象が起こります。これが基本的なプロセスになります。
新市場型破壊は、無消費を競争相手にするので既存企業を競争相手にしません。そのため既存企業は新市場型破壊の存在も気にならず痛みも感じませんが、既存市場の顧客が新市場に移る頃になって初めて痛みを感じるのです。既存企業にとっての脅威点はまさにこれですが、一方、イノベーションを推進する側からは敵に知られずに行動出来るので好都合になります。

新市場型の破壊的イノベーションの事例としては、20世紀初頭の1908年に登場したT型フォードが挙げられます。
まずT型フォードですが、ヘンリー・フォードは当時富裕層向けに自動車を製造していたメーカーとは違い大衆でも手に入る低価格の自動車を開発しました。

部品の標準化やフォードシステムと呼ばれる流れ作業を主体とした科学的管理手法を導入したことでこれを実現しました。
つまり、ヘンリー・フォードが対象にしたのは富裕層以外の一般大衆であり、新市場かつローエンドを対象にした、いわゆる新市場型破壊、さらに言うと新市場ローエンド型破壊になります。この新市場は無消費に置き換えられます。

●まとめ
今まで述べたことをまとめます。
イノベーションは2つに大別できます。それは、以下になります。
持続的イノベーション:常に技術の性能を向上させるイノベーション、より高機能を求める市場に受け入れられるイノベーション、ある技術を生き残させるためのイノベーション
破壊的イノベーション:性能は低いが相対的に価格も安い破壊的技術によるイノベーション、常に性能向上を目指す持続的イノベーションとは全く異質、主流市場以外の市場で受け入れられるイノベーション

また破壊的イノベーションは2つのパターンがあります。それは、以下になります。
ローエンド型破壊的イノベーション:主流市場の下位市場に破壊的技術が根付いて始まるイノベーション(事例:1990年代初頭に登場したデジタルカメラ)
新市場型破壊的イノベーション:主流市場とは異なる価値基準の新市場に根付いて始まるイノベーション(事例:1908年に登場したT型フォード)

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