アメリカはなぜ銃社会なのか?その理由はなぜなのかについて考えたことがある人はきっと多いと思います。
(この記事は、『ゆげ塾のマンガ構造がわかる世界史』を参考にしております。)
21世紀に入っても、アメリカ合衆国は銃規制で揉めており、1年間におよそ3万人もの死者数を出しながら一般市民全員に銃の所持が認められております。
アメリカが銃社会である大きな理由は、以下2つです。
①「世界の警察」と呼ばれ、巨大化した米国の銃器・武器メーカーから多額の資金を集め、その資金で※ロビー活動をしている全米ライフル協会の存在。
②アメリカ建国の当初から守ってきた民主主義というイデオロギーの存在。(ジョン=ロックが提唱した抵抗権がきっかけ)
これ以外にも移民の国アメリカの多文化は融合せず、摩擦ばかり起こし、人種間のみならず民族間の摩擦も銃を日常化させている原因の1つになります。
※ロビー活動とは、特定の主張を有する個人または団体が政府の政策に影響を及ぼすことを目的として行う私的な政治活動。
今回は、この理由の中の民主主義というイデオロギーの存在について語っていきたいと思います。
●古代ギリシアに遡る
話はだいぶ昔、今から約2000年以上も前、古代ギリシアでは政治は民会によって行われ、今と同じように民主主義が強い時代でした。その理由は、古代ギリシアでは戦争の際、歩兵が主体メンバーでありその歩兵はプロではなくアマチュアでした。メンバー構成には肉屋やパン屋や魚屋といった普段は商売をしている者もおり、戦争には各々が自前の武器を手にして戦場へ向かい命をかけて国のために戦ったのでした。こうした国の構成員である市民が、民間の兵士として軍事力を担っていたために民主主義が成立していたのです。
そんな古代ギリシアの戦闘においては馬が全く使われていなかった訳ではありませんが、非常に限定的なものでした。馬具のない古代では馬に乗ったまま剣や槍を構えることが出来ず、わざわざ馬から降りて戦わなければならず大変だったのです。なんとか馬の機動力を軍事利用するために、馬を操縦する人と戦士を分担したチャリオットと呼ばれる戦車も使用されていたみたいですが、細かい切り返しなどに難があり平坦な戦場でしか使えない状態だったようです。
●中世の貴族制の時代
時は流れ、今からおよそ1600年前の4~5世紀になると地球全体が寒冷化し食糧が尽きた遊牧民達(フン族)が農耕地帯に侵攻してきます。この遊牧民達が使いこなしていた馬具がヨーロッパに伝わっていきます。今でいうサドルとペダルのような鐙(あぶみ)と呼ばれる馬具の導入により、ヨーロッパでも騎乗して戦えるようになっていきました。
こうして鐙のおかげで馬上で踏ん張って戦えるようになったことで長い槍を持ったナイトと呼ばれる重装騎兵が登場しました。この騎馬の突撃という決定的な攻撃力は重装騎兵達を各地の領主にしていくことになります。これが中世の貴族制あるいは封建制の時代です。このナイト達は、自身に対抗できる暴力が無いことを理由に小さな村である荘園の領主様として権力を行使して横暴を振るっていきます。領民達は多額の年貢や強制労働を強いられたのでした。
日本でも武士階級の特権として武士が町人や農民から無礼を受けた時はその場で切り殺すことを許可する”切捨御免”といわれるものがありました。
●近代の民主主義へ
こうした中世の貴族制の時代にも終わりが訪れます。それが、銃の登場です。ここでやっと銃の話に戻ります。この銃の登場は軍事史の上でも政治史の上でも画期的な変化をもたらします。この銃の登場により、ナイトに市民が反抗できるようになり、市民革命を起こす要因となっていきます。市民革命とは、戦士階級の王や貴族が支配する身分制国家を商業・工業・農業者である市民が倒し、新たな自由主義国家を作ることです。
18世紀末までアメリカはおもにイギリスの植民地でしたが、イギリスは植民地であるアメリカに砂糖税や印紙税や茶税など様々な税金を課し尚且つ代表権を認めませんでした。この理不尽な重税に怒った市民達はアメリカ独立戦争をおこします。1775年に発生するアメリカ独立戦争とは、本国イギリスからの独立戦争ではなく独立革命なのです。つまり、市民革命の性格が帯びており、これが1789年に発生するフランス革命へと繋がるきっかけになったのです。
こうした市民革命が出来たのは銃が登場したからであり、つまり”銃が民主主義をつくった”のです。
これにより1776年に起草されたアメリカ独立宣言にはジョン=ロックが提唱した抵抗権が明記されており、抵抗権とは人民の幸福に害をもたらす政府を暴力によって打倒し新たな政府を作り直す権利です。この権利を保障するためにアメリカは暴力を分散運用しており、アメリカの各州政府も州軍という軍隊を持っており、また警察もFBI(中央警察)だけでなく州警察や市警察など各州や都市単位で存在しております。この暴力・権力の分散は、FBI vs 州警察のような問題が発生し、全体の効率性を損ないますが、しかしアメリカはその効率性よりも革命権の担保すなわち民主主義というイデオロギーに価値を置いているのです。これが、一般市民に対して銃の保持を認めている理由になります。「アメリカ市民1人1人が武装の権利を持つことで、市民全員に革命権を保障する」これがアメリカの誠実なのです。